
真面目か。
今日は移動日
移動中暇なんで余計な事考えるんですが
世界でなにが起こっているのか?
考えてみました。
と言うか前から思ってた事をまとめた感じです。
ドローンの話をしていると、よく聞く言葉があります。
「DJIの技術力はすごすぎる」
これは確かにそうだと思います。
もう一つ、ここ数年よく聞くのが、
「ウクライナのドローン開発は異常なスピードで進化している」
という話。
これも間違ってはいないと思います。
ただ、普段からドローンを作ったり飛ばしたりしている側から見ると、単純に「中国の技術力がすごい」「ウクライナのエンジニアがすごい」だけで片付ける話でもない気がしています。
むしろ自分が気になるのは、
なぜ、そこで技術が育つのか。
その環境の違いです。
DJIが強い理由は、ドローン単体の技術だけではない
DJIの製品を実際に使っていると、本当に完成度が高いです。
飛行制御、カメラ、ジンバル、通信、バッテリー、アプリ。
全部を一つの商品としてまとめる能力は、間違いなく世界トップクラスだと思います。
ただ、当然ですがDJIがすべての技術をゼロから発明しているわけではありません。
カメラセンサー、半導体、電子部品など、世界中のサプライヤーの技術が使われています。
これはDJIに限った話ではなく、今の電子機器なら当たり前のことです。
じゃあ、なぜDJIはここまで強いのか。
自分は「深センという場所」がかなり大きいと思っています。
基板を作る会社がある。
モーターを作る会社がある。
金型屋がある。
樹脂成形がある。
バッテリーがある。
電子部品も大量に流通している。
それらがかなり狭いエリアに集まっています。
試作品を作る。
問題が出る。
直す。
また作る。
この速度がとにかく速い。
日本で同じことをやろうとすると、部品を発注して、見積もりを取って、加工を頼んで、試作品が届いて……と、それだけでも結構な時間がかかります。
中国には、それをものすごい速度で回せる製造業の集積があります。
さらに、人件費、働き方、政府の産業政策など、日本や欧米とはそもそもの条件が違います。
だから自分は、DJIの強さを単純に、
「中国のエンジニアが日本より優秀だから」
とは思っていません。
もちろん優秀なエンジニアは大量にいると思います。
でも、それ以上に強いのは、
優秀な人間が、巨大なサプライチェーンの中で、ものすごい速度で試作と量産を繰り返せること。
なんじゃないでしょうか。
これは単純な「技術力」という言葉だけでは説明できない強さです。
技術を製品にする。
量産する。
実際に売る。
そして、すぐ次の製品へつなげる。
DJIの本当の強さは、そこにあるように思います。
ウクライナでドローンが急激に進化する理由
ウクライナについても、似たことを感じます。
戦争が始まってから、FPVを含めたドローン技術はものすごい速度で変わりました。
通信、ジャミング対策、AI、自律飛行、画像認識、迎撃ドローン。
数年前とはかなり状況が変わっています。
ただ、これも、
「ウクライナ人の開発能力が突然ものすごく高くなった」
というだけの話ではないと思っています。
今のウクライナには、世界中から企業、エンジニア、資本、技術が集まっています。
日本企業も例外ではなく、Terra Droneは実際にウクライナの迎撃ドローン企業へ出資し、現地で実戦環境での検証まで進めています。
そして何より大きいのが、
作ったものを実際の現場ですぐ試せること。
ここだと思います。
普通の国なら、新しい航空機や無線システムを作れば、試験、安全確認、認証、許可、調達など、いろいろな段階があります。
もちろんウクライナも完全な規制ゼロではありません。
ただ、戦時下ではドローンの運用や装備の認証などが大幅に簡略化されています。
さらにBrave1のように、開発側と実際に使う側をつないで、試験結果や現場のデータをまた開発へ戻す仕組みまであります。
つまり、
作る。
飛ばす。
落ちる。
原因を見る。
直す。
また飛ばす。
このサイクルがとにかく速い。
ドローンに限らず、機械は実際に使って、壊してみないと分からないことが大量にあります。
机の上だけで完成品を作るのは無理です。
普通なら何年もかけて集めるようなデータを、短期間で大量に集められる。
今のウクライナには、そういう特殊な環境があります。
だから進化が速い。
これも単純に「技術者がすごい」という話だけではなく、技術を進化させる環境そのものが違うんだと思います。
「日本はガラパゴスだから」は、本当に悪いことなのか
こういう話をすると、
「日本はガラパゴスだから無理」
という話もよく出てきます。
ドローン業界でも結構聞きます。
でも自分は、日本がガラパゴスであること自体は、そんなに悪いことだと思っていません。
むしろ結構好きです。
島国で、国土は狭い。
山が多い。
地震も多い。
台風も来る。
人口密度も高い。
そういう特殊な環境で長い間ものづくりをしてきたから、日本には日本独自の技術や文化が生まれました。
例えば地震に強い建物。
地震が多いから、耐震、制震、免震の技術が発達した。
これだって、その土地の特殊な事情に合わせて進化してきた技術です。
狭い住宅に合わせた家電や、小さくて精密な機械なんかもそうだと思います。
その土地にしかない問題に本気で向き合った結果、独自の進化をする。
それをガラパゴスと呼ぶなら、自分は別に悪いことだと思いません。
むしろ、それこそ日本の強みでもあると思っています。
問題なのは、
ガラパゴスであることではなく、そこで進化が止まってしまうこと。
日本だけで通用するルール。
日本だけで通用する製品。
日本だけで完結する市場。
そこで終わってしまえば、確かに世界では戦えません。
でも、日本独自の環境だからこそ生まれた技術を、世界で使える形にできるなら話は全く違います。
ガラパゴスを捨てる必要はない。
ガラパゴスで生まれたものを、世界につなげればいい。
自分はそう思っています。
規制も、本当に全部「悪」なのか
もう一つよく聞くのが、
「日本は規制が多すぎる」
という話です。
これもドローンをやっていると、本当によく聞きます。
航空法がある。
電波法がある。
場所によってはさらに別のルールもある。
正直、面倒だと思うことは自分もあります。
ただ、
「規制がない=良いこと」なのかというと、それも違うと思うんです。
車を考えると分かりやすいと思います。
車のルールは、車を運転する人だけのために作られているわけではありません。
歩行者がいる。
自転車がいる。
子どももいる。
高齢者もいる。
道路沿いで生活している人もいる。
休日子供とイベントに行ってドローン飛んでるとイラッとします。 w
車を使う人だけではなく、社会全体で安全に車を使うためにルールがあります。
車検だってそうです。
制度の細かい部分を見れば、「これは今でも必要なのか」と思うものもあるでしょう。
利権っぽく見える部分や、時代に合っていない仕組みだってあるかもしれません。
そこは変えればいいと思います。
でも、本来の目的は走っている車が一定の安全性を保つことです。
整備不良の車が公道を走れば、困るのはその車の持ち主だけではありません。
花火大会や大きなイベントでスマートフォンがつながりにくくなっただけでも、みんな不便だと言います。
電波は目に見えません。
でも、みんなで共有している有限の資源です。
その交通整理をしているものの一つが規制です。
ドローンだって同じです。
飛ばしている側だけを見れば、
「もっと自由に飛ばさせてくれ」
と思うことはあります。
自分だって思います。
でも空の下には、ドローンとは何の関係もない人がいます。
家もあります。
車も走っています。
飛行機やヘリコプターも飛んでいます。
使う人だけが便利なら、それでいいわけではありません。
だから自分は、日本の規制を全部まとめて「技術の邪魔をするもの」と考えるのは少し違うと思っています。
もちろん、時代に合っていない規制は変えればいい。
意味の薄い手続きはなくせばいい。
でも、
規制そのものを悪者にする必要はない。
と思っています。
制約の中で進化したものもある
ここで日本の自動車産業を見ると、面白いと思います。
日本の自動車メーカーは、何の規制もない自由な環境で成長したわけではありません。
安全基準もある。
排ガス規制もある。
騒音規制もある。
燃費基準もある。
車検制度もある。
その中で、
安全にする。
壊れにくくする。
燃費を良くする。
排ガスを減らす。
静かにする。
それでも価格を抑える。
そういう要求に何十年も応え続けてきました。
もちろん、日本車が世界で評価されるようになった理由が「規制だけ」だとは思いません。
製造技術、品質管理、企業同士の競争、現場の改善。
いろいろな理由があります。
でも、厳しい条件や制約に対応し続けたことが、日本車の品質を高める一つの力になった部分はあると思います。
つまり、
制約があるから生まれる技術もある。
自分はドローンも、そういう方向へ進めるんじゃないかと思っています。
じゃあ日本はどうするのか
日本には技術がないのか。
自分は全然そんなことはないと思っています。
センサー、精密加工、モーター、ベアリング、材料、バッテリー制御、熱設計。
ドローンを構成する一つ一つを見ると、日本企業が強い分野はまだかなりあります。
問題は、それを一つの商品にして世界へ出すところ。
そして、その商品を高速で改良していくところです。
ここで少し難しいのが、さっき書いた規制の話です。
自分は日本の規制そのものが悪いとは思っていません。
社会全体の安全を考えれば、必要な規制は当然あります。
ただ、それとは別の話として、
規制がある以上、自由に試せる範囲や開発のスピードに制約が出るのも事実です。
だったら、すべてを日本国内だけで完結させる必要もないと思います。
研究開発やコア技術は日本が握る。
量産は製造競争力の高い場所を選ぶ。
ただし単純に海外へ丸投げするのではなく、製造工程、品質、技術は自分たちでコントロールする。
そして実際の製品は、積極的に海外へ持っていく。
農業、インフラ点検、測量、警備など、本当にドローンを道具として使っている現場で、
使う。
壊れる。
直す。
また使う。
現場から文句を言われる。
また直す。
そうやって鍛えていく。
これは、
「日本は規制が面倒だから海外へ逃げよう」
という意味ではありません。
日本の規制には、日本の規制が必要になった理由があります。
でも世界を見れば、日本とは違う条件でドローンを使える場所もたくさんあります。
日本では簡単に試せないこと。
日本では集めにくいデータ。
日本とは全く違う気候や地形。
広大な農地。
砂漠。
寒冷地。
そういう環境まで、全部開発に使えばいいと思うんです。
海外だからできるテストをする。
そして海外で鍛えたものを、今度は日本へ持ってくる。
日本では、日本の安全基準、電波環境、人口密度、狭い国土といった条件の中で、さらに作り込む。
日本だから求められる安全性を作る。
海外で鍛えることと、日本の規制の中で鍛えること。
どちらか一つを選ぶ必要はないと思っています。
日本で鍛える。
世界でも鍛える。
そして、その結果をまた次の製品へ戻す。
これでいいんじゃないでしょうか。
自分の中では「ヤリス方式」
この話を考えていて、ふと思ったのがGRヤリスです。
昔のヴィッツのイメージは、どちらかというと普通のコンパクトカーでした。
でもトヨタはヤリスでWRCへ戻ってきた。
世界中の舗装路、雪、砂利、泥の上を本気で走らせる。
そして、そこで得た経験を市販車へ戻した。
GRヤリスは、モータースポーツから市販車へ技術を戻すという、考え方で作られた車です。
これ、ドローンでも同じようなことができるんじゃないでしょうか。
日本の特殊な環境で技術を作る。
一度、世界へ持っていく。
世界の厳しい現場で使う。
壊す。
直す。
また使う。
そこで得たものを、また日本へ持って帰ってくる。
そして日本の厳しい条件に合わせて、さらに作り込む。
また世界へ出す。
この繰り返しです。
中国と同じ条件で、中国より安く作ろうとしても厳しいと思います。
DJIと同じものを作って、
「DJIよりちょっと性能がいいです」
でも、たぶん厳しい。
だったら日本は、日本の面倒くさい環境まで利用して、
壊れにくい。
精度が高い。
長く使える。
安全に使える。
そして現場でちゃんと仕事をする。
そこまで徹底的に鍛えた道具を作る。
ガラパゴスなら、ガラパゴスでいい。
規制が厳しいなら、その中でも進化すればいい。
ただし、そこで閉じない。
ガラパゴスで生まれたものを、世界につなげる。
世界で鍛えたものを、また日本へ戻す。
自分はこのやり方なら、日本にもまだ日本なりの勝ち方があるんじゃないかなと思っています。
といいつつも金です。全ては莫大な資金です。
最後に
まあ、ここまで偉そうに長々と書きましたが、自分はドローンメーカーの社長でもなければ、研究者でもありません。
普段はドローンを飛ばして映像を撮ったり、人に教えたりしている、ただの映像屋です(笑)
なので「日本のドローン産業はこうするべきだ」なんて言える立場でもありません。
ドローンを触ってきて、中国の製品を使って、日本のルールの中で飛ばして、最近のウクライナで起きているドローンの進化なんかを見ていると、どうしてもこういうことを考えてしまいます。
DJIが強いなら、なぜ強いのか。
ウクライナの進化が速いなら、なぜ速いのか。
日本がガラパゴスなら、それは本当に悪いことなのか。
規制が多いなら、それは本当に全部なくした方がいいのか。
単純に、
「海外はすごい、日本はダメ」
で終わらせるより、その理由を考えた方が面白い。
そして、日本には日本なりの勝ち方がまだあるんじゃないかなと思っています。
自分はただのドローン屋なので言うだけですけどね
構想・考察:俺
文章構成:チャッピー




コメント